TSUKUCOMM-54
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06聴削除するような作業を自動的にやってくれています。どんなにたくさん勉強をしたり、運動や楽器の練習をしても、その後、睡眠をとらなければ、その知識やスキルは固定化されないのです。 とはいえ、動物はなぜ眠らなければならないのか、睡眠、とりわけレム睡眠の根本的な役割はまだ完全には解明されていません。レム睡眠中は、全身の筋肉は弛緩していますが、脳は活発に活動しています。脳の活動に伴って、体が動いてしまわないように麻痺させるためのメカニズムがあるわけです。近年、哺乳類だけではなく下等動物も、レム睡眠とノンレム睡眠のような2種類の睡眠をとっていることが分かっています。どうして二つの睡眠状態が存在するのか、その謎が解ければ、睡眠障害などの病気の治療にもつながるはずです。体内時計と睡眠 体内時計も睡眠のスイッチと密接に関わっています。体内時計はほぼ24時間のリズムで動いていますが、毎朝、日が昇る、すなわち光を浴びることでリセットされます。ところが、照明を使ったり、布団に入ってからも携帯電話の画面を操作するなど、夜間でも明るい中で過ごしていると、体内時計は、時間が間違っていると判断して、時間を後ろへずらしてしまいます。平均的には、朝日を浴びてから約16時間後に、最初の睡眠のスイッチがオンになって、眠りの体制が整えられていきますが、時計がずれていると、そのスイッチがうまく入らず、眠ることができなくなります。逆にいうと、このスイッチが入る前はなかなか寝付けないわけで、早起きをするために早く寝ようとしても難しいのはそのためです。 夜間の明かりや飛行機での長距離移動などは、当たり前のことのように思えますが、人類の進化は、まだこういったライフスタイルには適応していません。そのため、適切な眠りができない時には、薬を使うなどの対処が必要になるのです。可視化される脳の働き 脳内での情報伝達を担っているのはシナプスです。その一つひとつがどのような挙動をしているかを探ることは、脳の活動を知る上でとても重要です。シナプスは固定された構造ではなく、必要に応じて生まれたり消えたりし、形状や機能もどんどん変化しています。脳の微細構造から見れば、昨日の私と今日の私は違うのです。 そのようなシナプスの様子は、二光子顕微鏡を用いて観察することが可能です。10年ほど前に開発されたもので、これによって、生きたままのマウスの脳内を、シナプスTSUKUBA FRONTIER

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