TSUKUCOMM-54
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08ワイン作りというのは どのような仕事ですか? 実際にはワイン用のブドウの栽培、ほぼ農業です。プラスアルファで醸造があって、あとはワインの販売ですね。日本では山梨や長野が有名ですけど、実は明治時代にはすでに、フランスのボルドーから茨城へブドウの苗が輸入され、栽培が始まっています。当時の畑はもうほとんど残っていませんが、茨城のワイン作りは歴史があるんです。 とはいっても、つくば市内でのワイン作りは、ここ10年ぐらいのことです。私も2015年に筑波山麓の耕作放棄地のようなところを開墾し、ブドウを植えるところから始めました。秋口は収穫が終わってちょっと一息つけますが、12月には剪定作業が始まりますし、醸造もあるので、年中休みがない感じです。 ワインの出来は7〜8割がブドウで決まると言われます。あらかじめ目指す味をイメージするのではなくて、その年に採れたブドウに応じて、その味わいが生きるように発酵のプロセスを管理します。職人的な要素もありますが、サイエンスとして理屈が分かっていればうまくコントロールができると思います。つくばでワイン作りをすることは いつごろから考えていたのですか? 農業をする気は全くありませんでしたが、生物学を学びたくて筑波大を選びました。実家が守谷なので、つくばでよかったですね。博士課程まで進み、地元での就職を希望していたんですけど、結局東京の製薬会社に就職しました。 もともとお酒は好きだったので、東京であちこち飲み歩いているうちにワインにはまって、ワインエキスパートの資格を取ったんです。それでも創薬の仕事がとても面白くてやりがいがあったので、すぐにワインに関連した仕事に転職しようとは思いませんでした。 それが震災の時の混乱を目の当たりにして、このまま東京にいて大丈夫か、と思ったんです。そもそも好んで上京したわけでもないし、将来の社会保障にも不安があるから、我々の世代は一生働き続けなければならないのだろう。だったら好きな場所で好きなことをやった方がいい、と考えるようになりました。そんな時に、たまたま友人がくれた本にワイナリーを始めるために必要な資金なんかが書いてあって、なんとかなりそうだと思ったんですよね。ずいぶん思い切りましたね いきなりワイン作りというのはさすがに無謀なので、まずは自分が好きな長野のワイナリーに毎月通って、手伝いをさせてもらいました。作業の流れも分かり、ワインと生物学、自分の知識を生かせるビジネスだと思いました。それで、会社を辞め、改めてそのワイナリーで1年半の研修を受けた後に、つくばTSUKUBA ALUMNI株式会社ビーズニーズヴィンヤーズ 代表取締役今村 ことよ氏つくばならではのワイン作りを突き詰める

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