TSUKUCOMM-55
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10 自己ベストは5m52cm。助走とポールの反発を跳躍のエネルギーに変え、車両用交通信号機に匹敵する高さを飛び越える。「空を飛んでいる感覚」がたまらなく好きだ。 170cmの身長は、棒高跳の選手としては小柄だ。だが、ポールを手にして走っても速度が落ちない助走を持ち味に、5m05cmの中学記録と5m51cmの高校記録を打ち立ててきた。昨年9月の日本学生対校選手権(日本インカレ)では1年生ながら初優勝し、日本の棒高跳界の次代を担う存在となっている。 棒高跳を始めたのは小学4年生の時。「自分の今の体力が知りたい」と、軽い気持ちで地元・群馬県のアスリート発掘事業に応募したのがきっかけだ。助走の速さから、棒高跳への適性を見いだされ、県内の棒高跳専用施設に通うようになった。 最初は竹製のポールで練習していたが、小学5年時にグラスファイバー製を使うようになり、体がふわっと浮く感覚を初めて経験した。それが楽しくて練習に夢中になった。 小学6年の夏、練習で右肘を脱臼骨折する大けがを負い、約1年間、跳べない日々が続いた。「リハビリ期間は苦しかった」が、中学で競技に復帰後は、順調に記録を伸ばす。 その中でも忘れられないのが、高校1年時に出場したユース五輪での体験だ。アルゼンチンで開かれた大会で、周りは自分より高身長の選手ばかり。背が高い方がポールが扱いやすいとされるが、「小柄でも負けない」と奮い立ち、自己ベストで銀メダルに輝いた。「大舞台ほど試合を楽しめる。それが勝負強さにつながっている」と自己分析する。 本学体育専門学群に進んだのは「感覚に頼りがちだった跳躍を科学的に捉えたいと考えた」ことが大きい。コーチと相談しながら、独自の練習メニューを組み立てるなど、自分の跳躍を見つめ直す取り組みができていると感じている。現在は、踏切時に助走速度を最大にするため、ストライドを見直し中だ。 日々の生活では、「支えてくれる周囲の人々への感謝の気持ちを忘れない」ことを、常に心掛けている。棒高跳は、跳躍後の選手を受け止めるマットの準備一つをとっても、周囲の助けがなければ行えない競技だからだ。 自己ベストの先に待つのは、5m75cmの学生記録と5m83cmの日本記録。その高みを越えることができれば、目標であるパリ五輪出場が見えてくる。これからも若きアスリートの飛躍から、目が離せない。LI失敗を恐れずに前へ進むHsieh Haojung謝 昊容 さん人文社会ビジネス科学学術院人文社会科学研究群(博士前期課程)国際日本研究学位プログラム2年後輩にひとこと筑波大の陸上競技部は、入学時から明確な目標を持っている学生にぴったりの環境です。学生の自主性を尊重してくれるからです。だからこそ、自らを律し、自分で練習メニューを組み立てるなど、考えながら競技に向き合う力を身に付けることができます。実は日本のラーメンが大好き

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