TSUKUCOMM-57
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ゲノム編集と遺伝子導入により作出したアルビノイモリ本研究で作製した六角形のお椀型結晶(骸晶)の電子顕微鏡写真15生期になっても(一生を通じて)、体のさまざまな部位を繰り返し再生することができます。このようなイモリの謎を解くことができれば、再生医療などに大いに役立つはずです。 生命環境系の千葉親文教授らはこれまでに、イモリが陸生期にも再生能力を維持ました。さらには、この六角形の骸晶を敷き詰めた構造をつくることも可能です。 このような、精密に制御された骸晶の作製は極めて先駆的で、光機能の発現など、新しい結晶材料として、光工学や電子工学、触媒などへの応用が期待されます。しているメカニズムとして、陸生期になると減退してしまう幹細胞の働きが、脱分化(いったん分化した細胞が再び未分化の状態に戻る現象)によって補われていることを発見しています。そこで今回、このような脱分化が、発生のどの段階で生じるようになるのかを調べました。 アルビノ(全身のメラニン色素合成ができない)のイモリを用いて、再生中の肢内部の細胞の挙動を蛍光標識で観察したところ、筋細胞(筋線維)の脱分化によって肢を再生できるようになるためには、イモリが、性成熟直前の年齢(約13ヶ月)とサイズ(全長6cm程度)にまで成長すること、また、幼生(水生期)から変態して陸生期に転換すること、の二つの要因の組み合わせが必要であることが分かりました。さらに、イモリの筋線維には生まれつき脱分化能力が備わっており、変態と成長によってその能力が発現するようになることが明らかになりました。RESEARCH TOPICSRESEARCH TOPICSミクロサイズのお椀型多面体結晶の作製に成功にできあがります。また、溶液濃度の調整 結晶と一言にいっても、いろいろな種類やキラリティを選べば、より複雑で精緻ながあります。その一つに、雪やビスマス結晶形状のものを作ることができます。得られのように、凹多面体形状で特徴づけられるた骸晶の中に、実際に液体を入れて化学反「骸晶(がいしょう)」と呼ばれるものがあり応を起こしたり、ポリマーを溶かしたりしてます。通常の結晶はゆっくりと成長するのみたところ、壊れたり穴が空いたりするこに対して、骸晶は急速に形成されるため、となく、小さな器として使えることも分かり特異な結晶面や複雑な形状を持っています。しかしながら、このような急速な結晶形成プロセスを制御することは難しく、形状や大きさ、配向性がそろった骸晶をつくることはなかなかできません。 数理物質系の山本洋平教授らは、面キラリティ(分子の表面と裏面で化学構造を区別できる性質)を持つ共役系有機分子を基板表面で自己組織化させることにより、数ミクロン程度の大きさで、均一な形状、かつ同じ向きに成長した、六角形のお椀型多面体単結晶(骸晶)の作製に成功しました。この小さな骸晶は、原料となる溶液を基板表面に滴下すると、わずか10秒程度で一斉イモリの肢が再生する基本原理を解明 ヒトを含む四肢動物(4本足の脊椎動物)は一般に、水生期(発生初期の水中で暮らす期間)には高い再生能力がありますが、陸生期(孵化や出生後に陸地で暮らす期間)になると、その能力は低下もしくは失われてしまいます。ところがイモリだけは例外で、陸

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