TSUKUCOMM-57
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07も、また繰り返してしまいやすいものです。しかし一方で、そういった人たちの多くは、立ち直りたいという気持ちを持っています。 これらの逸脱行動の原因となるのは、認知や行動のゆがみですから、それを修正する、つまり治療をすることは可能です。実際、心理療法による集中的な治療プログラムによって、再犯率を30ポイント近く下げることができるというデータが示されています。もちろん、そういった治療を提供する場所や機会のインフラを整えること、そして、治療の後も孤立しないための長期的なサポート体制につなげていくことも重要なのは、言うまでもありません。人間系 教授行動は変えられる 犯罪など、社会規範から逸脱した行動を変える必要があるとき、どのような方法が有効でしょうか。みんなで説得をしたり、理路整然と説明したり、あるいは、何らかのペナルティを科すという方法も考えられます。けれども、そう簡単には変われないのが人間です。頭では理解していても、ストレスや不安の方が大きかったり、欲望や快楽に負けてしまったり。そんな時に力を発揮するのが心理学です。 このような逸脱行動をやめさせるためには、刑罰を科したり、本人が反省するだけでは十分ではありません。とりわけ、薬物依存や性犯罪は、刑期を終えて社会復帰して疫学的手法で心理を捉える こうした逸脱行動の原因や関連要因を探るには、データが重要になります。海外では、ある地域で生まれた子どもたちを、何十年にもわたって追跡し、医学やメンタルヘルスの観点からさまざまなファクターを分析するような疫学調査の事例があります。そこまでの大規模なプロジェクトとはいかないまでも、このような研究手法を取り入れようとするのが、心理学の分野でもトレンドになっています。 現在取り組んでいるのは、性犯罪者を対象にした調査です。性犯罪のリスクファクターにはさまざまなものがありますが、着目しているのは「遅延価値割引」という認知原田 隆之

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