TSUKUCOMM-57
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PROFILE1964年徳島県生まれ。一橋大学社会学部、同大学院社会学研究科博士前期課程修了。カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校大学院心理学研究科修士課程修了。東京大学大学院医学系研究科で博士(保健学)取得。法務省矯正局法務専門官、国連薬物・犯罪事務所ウィーン本部アソシエートエキスパート、目白大学人間学部教授等を経て現職。専門は、臨床心理学、犯罪心理学、精神保健学。URLhttps://www.human.tsukuba.ac.jp/counseling/筑波大学人間系 原田研究室犯罪行動をはじめとする人間の逸脱行動の分析と治療、行動変容について研究している。科学的な心理アセスメントや心理療法の開発を目指し、さまざまな臨床研究を実施している。現在は、性犯罪者のリスクファクターの研究および治療プログラムの開発、フィリピンにおける覚醒剤依存症治療プログラムの開発(JICAプロジェクト)などに取り組んでいる。科学的な方法を重視し、真に社会の安全、個人の心身の健康や適応に役立つ臨床心理学の実践を目指している。 社会的インパクトの大きな重大犯罪が起きた時、メディアでは、専門家と称する人たちが、犯人の育った不遇な環境や特異な人柄と結びつけて、その動機や行動を説明しようとします。けれどもそのような犯罪は頻繁に起こるものではなく、エビデンスになるほどのデータは集まっていません。真の専門家なら、安易に答えを導くことはできないはずなのです。 確かに人々は、そのような分かりやすい説明を探しがちです。しかし間違った情報や偏見が、心理学の知識として広がってしまうのは、社会にとっても、学問としても望ましくありません。学会も、そのような状況を踏まえて、積極的な情報発信を推進するようになってきました。そういった背景もあり、学術論文や専門書だけではなく、一般向けの新書やウェブメディアの記事も数多く執筆し、メディアやSNSでも精力的に発09たくさんいて、その多様性に、人間に対する価値観が大きく開かれました。それは、人間性への関心を高めるきっかけになりました。 人の心には、愛や夢といった明るい部分だけでなく、妬みや憎しみといった闇の部分もあります。犯罪は、普段は隠されている闇の部分が可視化されたものの一つとして捉えることができます。犯罪者だから、という先入観を持たずに、こうした部分に目を向けることが、より深い人間理解につながるのです。言するように努めています。 犯罪心理学は、その知見を社会に還元することが重要。刑務所に治療プログラムを導入したり、学校教員による性犯罪の問題への取り組み、さらにそれに向けた司法や政治の関係者との協働など、社会とのさまざまなコミュニケーションも大事にしています。そうして、臨床での治療にあたること、一度は過ちを犯した人々が回復していく姿を見ることが何よりの喜びです。正しい心理学を広め 社会に役立てる

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