TSUKUCOMM-58
15/20

新種Sirobasidium apiculatumの酵母のステージ(左)と子実体(キノコ)のステージ(右)ユーザーの⼿に着⽤した様子15る痛みや、痛みを加える前後の不安度合などを、聞き取り、アンケート、唾液分析により検証しました。 66人のデータを分析したところ、ロボットを着用した場合、痛みが有意に減少していました。また、ユーザーの握りに対してロボットが握り返す動作を行うと、唾液中のオキシトシン(人のストレスレベルに対応すま増殖する菌類は「酵母」と呼ばれます。 多くのキノコの種は担子菌門と呼ばれる菌類のグループに含まれます。その中でもシロキクラゲ目の仲間は、発育の過程でキノコと酵母の両形態をとりますが、酵母としてはあまり認識されてきませんでした。また、一部の酵母は担子菌門に属するものるホルモン)が減少する傾向がありました。さらに、この実験後、参加者の注射に対する恐怖心が有意に低下したことも分かりました。 今後、こうしたロボットを仮想現実や拡張現実と融合すれば、より広い場面や用途で人の痛みや不安を和らげることができるようになるかもしれません。の、酵母から子実体を誘導するのは困難で、系統関係は未解明でした。そのため、シロキクラゲ目の分類学的研究は十分ではありませんでした。 生命環境系の出川洋介准教授らは、シロキクラゲ目の2属(SirobasidiumとSirotrema)を対象に、キノコとしての形態観察、酵母の状態における培養性状の検討、交配試験、DNA解析など多面的なアプローチで、それぞれの発育過程を観察しました。その結果、Sirobasidium属の1種が新種と判明し、同属の別の1種を50年ぶりに再発見しました。また、Sirotrema属とされてきた1種は、別の属に分類することが妥当だと判断されました。 同様のアプローチで菌類を再分析していけば、シロキクラゲ類のみならず、モチ病菌など他の分類群においても、「酵母」と「キノコ」または「カビ」の二つの面の情報を加味した、菌類の新たな分類体系の整理が進むことが期待されます。RESEARCH TOPICSRESEARCH TOPICS「酵母」と「キノコ」の二面性を持つシロキクラゲ目の新種発見! 「カビ」と「キノコ」と「酵母」はどれも菌類です。菌類はさまざまな姿形をとることが知られており、その形態に応じて呼び方が変わります。顕微鏡レベルの微小な菌糸を主体とするものは「カビ」、胞子をつくるために菌糸が集合してできた構造物(子実体)が「キノコ」、出芽や分裂によって単細胞のま痛みや恐怖を和らげるためのウェアラブルロボット 誰かに腕や背中などをなでたりさすったりしてもらうと痛みや不安が和らぐ、という感覚は多くの人が体験していることでしょう。ソーシャルタッチと呼ばれる、こうした人同士の接触がもたらす効果は、さまざまな学問領域で報告されており、近年では人とロボットの間のソーシャルタッチも研究されています。 システム情報系の田中文英准教授らは、ユーザーが手にはめて握ると、痛みや恐怖を和らげられるウェアラブルロボットを開発し、その効果を初めて定量的に確認しました。このロボットは柔らかな素材で覆われており、膨張と収縮をそれぞれ制御できる三つのエアバッグを内蔵しています。これにより、外から大きな手で握られている感覚などをユーザーに与えます。 実験では、参加者に利き手でロボットを握ってもらい、反対側の腕に熱刺激装置から痛みを加えました。そして、その間に感じ

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る